はじめに~コロナ時代をどう生きぬけばよいのか
心のキャリアコンサルタント 五十嵐信博
本書は、ビジネスパーソンの皆さん、とりわけ人生の後半戦(セカンドハーフ)を戦っている40歳以上の皆さんのために書きました。
新型コロナウイルス(COVID-19)のために、ビジネス現場では、さまざまな変化が起こりました。今後も、その変化は加速していくと思われます。そんな中で、とりわけビジネス経験を積んできた皆さんは、世の中をリードしていかなくてはなりませんね。
経験を積んだ皆さんの活躍は、職場にあっては職場の言動力、若い人たちのモデルとなりますし、広く社会に目を拡げれば、経済を回していくエネルギーとなるのです。
そして個人領域に目を転じれば、人生経験を活かして家族をささえる責任があります。また、自分自身の人生を輝くものにしていきたいという願望も当然あることでしょう。
大きな変化を乗り越えていくためには、私たちは働き方を、ひいては自分自身や、生き方を変えなくてはいけないでしょう。
「この世に生き残るのは、最も強いものでも、最も頭のいいものでもなくて、変われるもの」という言葉は、ダーウィンが本当に言ったかどうかは別にしても、名言だと思います。
どう変わればよいのか。その大きさとともに、方向性が問われます。
若い時ならば、無駄走りをたくさんしても、模索の中から何かをつかむことの意味はありますが、すでに後半戦を戦っている皆さんには、努力するベクトルの方向づけに手がかりがあれば、それに越したことはないはずです。
私は、企業のマネジャーを長く務めた後、独立し、キャリアコンサルタントになりました。
キャリアコンサルタントは、仕事にはどう取り組んでいけばよいのかを、皆さんとともに考えるのが役割です。ただそれは、いかに生きていけばよいのかと表裏です。なぜなら、仕事と、仕事以外の人生とは一体だからです。
私は、多くの企業様で、キャリアデザイン研修などを通して、人生視点での自分らしい生き方や、その構築への目のつけ所を提案してきました。
そんな経験を通して、皆さんにおすすめしたいのが、アメリカの心理セラピスト、エリック・バーンの創始した心理理論であるTA(Transactional Analysis)です。
本書でお伝えしたいのは、バーンのTAの、現代のビジネス生活への応用です。
TAは、1960年代、アメリカの社会が大きく変わろうとする時代に生まれた理論です。もともと、変化の中で人は心をどう持ち、どう考えて生きればよいのか、ヒントを提供してくれる、いわば変化の中で人を救う理論と言えます。
ですから、今日の私たちが、新型コロナウイルスがもたらした大きな変化やストレスを乗り越えて生きる上でも、今何が起きているのか、何が大事なのかを見て取るためのフレームを、TAは提供してくれます。
これからの自分の人生をどう構築しようかとお考えのあなたには、きっと役に立つことでしょう。
なお、本書では「バーン心理学」という言い方をしようと思います。
TAは世界中の心理臨床の場で役立てられ、日本でも「交流分析」として心理臨床を行う本流があります。一方、それを取り囲む形で、バーンの理論やコンセプトを応用的に活用している人たちもいます。
こうした本流、支流を合わせた形で、バーンに敬意を表して、敢えて「バーン心理学」と呼びます。
バーンは、精神分析をふまえて、それを乗り越えた、わかりやすく役立つ理論を作りました。本書は、そうした革新性にならいたいと思っています。
TAにインスパイアされて、あらたなモデル化を試みたいと思います。また、これまでの交流分析体系から、少しふみこんだ意訳もしています。一般の方によりなじみやすいようにという意図です。
経験のない変化の時代を、あなたが、日々さらに自分らしく充実して生きるために、本書が手がかりとなればうれしく思います。
不安の時代を充実して生きぬく知恵
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