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ゆめ芝居 それがしの申しますことひと通り・・・

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物語とは

人は物語をします。

物語をする意味は、心の中で行う経験のつづり直しだと思います。
他人に聞かせるかどうかにかかわらず、自分の中で経験を意味づけしながら整理しているのです。

聞いてくれる人、質問してくれる人があれば、人は語り始めます。
それが「物語る」という行為です。

歌舞伎でよくある、「物語らんと座をかまえ」という場面を思い出します。
進行中、あるいは少し前にあった戦の様子を、熊谷直実や佐藤忠信が、しぐさを入れて語ります。

それが、相手に聞かせることを前提とした「お話」になっていったのでしょう。
相手に聞かせるとなれば、整形、増幅され、興味を引くようなものになっていきます。


物語の目的は、あるときは経験の継承であり、あるときは娯楽です。
物語という形式をとった、ある人間の経験の再利用です。

いったん形式が生まれれば、その形をさらに使った独り歩きが始まります。
実経験から離れた物語を「紡ぐ人:作家」や、「語る人:話芸者」が生まれたでしょう。

一方では、物語として語ることで、経験を今の時点から再編成してもらう(生まれたときとは逆の形で)、カウンセリングのようなものも生まれました。


いずれにしろ、人が物語をするのは、自分の家族や、仲間や、子孫に、自分の足跡を残したいという根源的な欲求に、源があるように思います。

聞く側にとっても、聞くことは快いことです。
私たちの中には、聞くことで「よく生きる」糧にしようという、生きるためのプログラムがあるのでしょう。
少なくとも、他人が語るのを聞くことで、自分だけではできない多くの経験をすることができます。

そう考えてくると、私たちはもっと物語るべきなのでしょう。
また、聞くべきなのでしょう。

物語とは、人間が獲得してきたすばらしい育成手法なのだと思います。
by 50TEMPEST | 2011-03-01 10:43 | 見て聞いて考えた