部下を抱えていた頃、いろいろやってみました。
成功、失敗、整理してみましょう。
◎盗んでこい
総務だった時のことです。
課内のルールとして、月に1回、半日の外出を認めました。
内容は不問。
展示会やイベントを見るもよし。ショールームのようなところをハシゴするもよし。講演を聞くもよし。
ただし、条件がひとつ。
業務として行くのだから何か三つ「盗んで」来ること、です。
配布された物、レジメ、係員の接客態度、見せ方のアイデア等々、何でもいいから3点は学んでこい。
そして翌朝私に報告しろ、と言いました。
総務という部署は、仕事の中にさまざまな要素を持っています。
たとえば用度品の購入ひとつにしても、今どんないい品物が売られているのか、担当者には関心を持って見ていてほしいと思いました。
事務用品、什器類、いつも使っているものを安く買うことも大事ですが、より使いやすいものが生まれているならば、変更の提案ができなくてはいい仕事にはなりません。
どんな福利厚生を提供すれば社員は喜ぶのか。
イベントではどんな進め方をするのがよいのか。
お客様にはどんな品をお贈りするのがよいのか。
どんな情報でも総務の仕事に役立たないものはないのです。
ただただ社内で真面目にふるまっているよりは、たまに世の中を見てきてほしいというのが、私のねらいでした。
その気で見れば、何事にも学ぶ点はあります。
反面教師という言葉もあるのですから。
実は三つ盗もうというのは、私自身で身につけた習慣でした。
ある公開セミナーがまったく期待はずれの内容だったのですが、せっかく来たのだから、何か盗んで帰ろうと考えたのがきっかけです。
はじめに、新人の2人が、恐る恐る申し出てきました。
その後も、この2人は、この「制度」を最も利用しましたね。
そして、クリエイティプな、いい仕事をしてくれました。
若い課員が前日のことを話題にし、次は何にしようと話しているのを、多少はうらやましく思ったのでしょう、先輩達も、少しずつ申し出てくるようになりました。
やってみてわかったことですが、課員達が日頃好奇心を持って世の中を見ているかどうか、またどんなことに関心を持っているのかが、そこから読み取れました。
そもそも好奇心がないと、何でも見に行ってもいいよと言われても、何があるのか見当もつかないのですね。
総務マンとしての意識を作る上で、これはうまくいったアイデアでした。