ゆめ芝居 それがしの申しますことひと通り・・・

igarashi.exblog.jp
ブログトップ

子規の詩情

正岡子規といえば、
 「柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺」
ですね。

先日、NHK-TVの番組で、おもしろいことを言っていました。

この句を聞く人は、晴れた秋空を想像するが、この句が作られた日は時雨空だった。
⇒当時の奈良地方の気象記録では、そうなのだそうです。

子規が柿を食ったのは、前夜、東大寺の前の宿屋でだった。
⇒そのことは随筆に書かれているのだそうです。
彼は柿が好きで、女中さんのむいてくれた柿を食べている時、東大寺の鐘が鳴ったのだそうですよ。
まあ翌日行った法隆寺のそばでも、食べない限りはありませんが、天気が悪ければ柿どころではないでしょう。

この句には、ヒントになっていそうな他の句がある。
⇒夏目漱石が、「鐘つけば 銀杏散るなり 建長寺」 と詠んでいます。
松山の新聞に投稿されて記録に残っているのです。

もっとも、漱石に俳句を教えたのは子規です。
漱石は松山に教師として奉職中、静養せよと子規を東京から呼び寄せて同居しました。
その間に子規が俳句を教えたわけ。
ふたりは、ともに作り、ともに投稿していたのです。

これらの色々が子規の頭にあって、冒頭の句に結実したといえます。
俳句を作るということは、見たままを言葉にするのではなく、やはり詩の創作なのだ、ということがわかりますね。

「鐘つけば」も悪くないと思うのですが…。
鐘の音が空気を揺らし、黄色く色づいた銀杏の葉をはらはらと散らす。
音も色もありますしね。

「柿食えば」のほうは、のどかさ、静かさ、おだやかさ、気持ちのよさなど、奥に深い詩情が感じられます。
確かに子規が一枚上ということでしょうか。
[PR]
by 50TEMPEST | 2010-02-02 14:56 | 見て聞いて考えた