千葉県立美術館で山下清展を見てきました。
手でちぎったとは思えない細密な絵には感動。
昔の素材なので、紙の酸性化、褪色、カビ、はがれなど、かなり問題をかかえていて、修復の努力がなされていることも紹介されていました。
驚く点は・・・。
・風景の奥行き感
大きい景色は大きいなりに、小さい景色は小さいなりに、遠近を正確に切り取って再現している
・細密な表現
大きな風景の中の人ひとりでも、正確なバランスで描きこんでいる
・再現力
頭の中にある写真のような映像を、貼り絵では迷わずに貼り込み、
デッサンでは直にフェルトペンで書きこんでいる
・日記帳の「自分」
放浪中、鉛筆で書かれた絵には、自分自身が後ろ姿で登場している
ちょうど別の存在が、その有様を眺めているように
人間の目は、これだけのものを見ているのだな、とあらためて思います。
「見た」というだけなら、見たものは、彼以外の人間でも同じはずです。
その人なりの表現になるのは、入ってきた情報が、脳のところで取捨選択されるのでしょう。
もちろん、表現する技術の有無や、あえて表現しようとする意欲の程度もあります。
しかし、それが理想的にあったとしても、脳は無精するでしょう。
彼の場合は、見て心が動いた景色を、写真のように切り取って記憶し、さらに再現する。
これだけの情報量を、正確にそのまま表現できることは、ほんとうに驚異的です。
何に感動するかの感性のよさや、生まれた作品の「美しさ」は言うまでもありません。