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ゆめ芝居 それがしの申しますことひと通り・・・

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山下清展で考えたこと

千葉県立美術館で山下清展を見てきました。
手でちぎったとは思えない細密な絵には感動。

昔の素材なので、紙の酸性化、褪色、カビ、はがれなど、かなり問題をかかえていて、修復の努力がなされていることも紹介されていました。

驚く点は・・・。
・風景の奥行き感
 大きい景色は大きいなりに、小さい景色は小さいなりに、遠近を正確に切り取って再現している
・細密な表現
 大きな風景の中の人ひとりでも、正確なバランスで描きこんでいる
・再現力
 頭の中にある写真のような映像を、貼り絵では迷わずに貼り込み、
 デッサンでは直にフェルトペンで書きこんでいる
・日記帳の「自分」
 放浪中、鉛筆で書かれた絵には、自分自身が後ろ姿で登場している
 ちょうど別の存在が、その有様を眺めているように


人間の目は、これだけのものを見ているのだな、とあらためて思います。

「見た」というだけなら、見たものは、彼以外の人間でも同じはずです。
その人なりの表現になるのは、入ってきた情報が、脳のところで取捨選択されるのでしょう。

もちろん、表現する技術の有無や、あえて表現しようとする意欲の程度もあります。
しかし、それが理想的にあったとしても、脳は無精するでしょう。

彼の場合は、見て心が動いた景色を、写真のように切り取って記憶し、さらに再現する。
これだけの情報量を、正確にそのまま表現できることは、ほんとうに驚異的です。


何に感動するかの感性のよさや、生まれた作品の「美しさ」は言うまでもありません。
by 50TEMPEST | 2011-06-12 12:39 | 見て聞いて考えた