まず上がとがった二等辺三角形を描いてください。その、上から1/4ぐらいのところに、底辺と平行に(つまり横に)波線を描いてください。三角形が水面上と水面下に区切られたことになりますね。
メンタルヘルスを考えます。
水面上は、うつのような病気を発症した方とします。
水面下には、病気未満の方から健康な方まで、ずっと裾野が広がるわけです。
はじめの頃、メンタルヘルスのテーマは、早期発見、早期対処でした。
もちろん何の病気でも、早期発見、早期対処は大事で、それが早く治ることにつながりますから。
たいていの病気は、患者が具合が悪いと申し出てきます。
また、一斉レントゲン検査などすれば、病気の人は見つかります。
けれども、メンタル不調は多くの場合、そうなりません。
そこで、見つける役目が上司たちに与えられます。
うつはこんな症状を呈するから、上司は部下たちをよく見ていて、早く見つけなさい。
そして医療に乗せなさい。
しかし、それは医者の発想です。
現場は、そう簡単ではありません。
あなたは病気だということは、色分けすること。
腐ったリンゴを箱から取り出すといったイメージがつきまといます。
本人は嫌がります。
何か言われた当人は、モチベーションが下がります。
そもそも見つけることは簡単ではありません。
人間は、一気にバタリとメンタル不調になるわけではありません。
水面上に顕在化した「病気」状態の下には、
なりかけ⇒やや不調⇒やや健康⇒とても健康と、裾野が広がります。
典型的な症状を呈するレベルで、もう早期発見ではないのです。
また、かなり具合が悪くなっていても、本人はがまんします。隠します。
そもそも、素人にはなかなかわからないのです。
言葉でいくら症状を聞いたとしても、それがそうだとは、言えるものではありません。
ですから、産業現場のメンタルヘルスのテーマは、早期発見よりは、予防でなければなりません。
結核を追放できたのは、一斉検診で早く見つけただけでなく、衛生環境、栄養、教養などが向上したこと、つまり健康状態がよくなったおかげなのです。
メンタルヘルスにつながるような環境要素を減らし、ストレス対処を身につけ、体力を上げていくこと。
健康を向上することで、水面のラインを上げていく、これこそが必要なことと考えています。