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ゆめ芝居 それがしの申しますことひと通り・・・

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風の丘ホール「コシ・ファン・トゥッテ」のための解説

コシ・ファン・トゥッテ   ブォルフガング・アマデウス・モーツァルト作曲

●登場人物
 フィオルデリージ  フェラーラからナポリに来て住んでいる姉妹の姉
 ドラベッラ       同じくその妹
 デスピーナ      姉妹の小間使い
 グリエルモ      青年士官 フィオルデリージの恋人 フェッランドとは親友
 フェッランド      青年士官 ドラベッラの恋人 グリエルモとは親友
 ドン・アルフォンソ  老哲学者 青年士官2人の友人

●あらすじ
舞台は18世紀のナポリ。
2人の美しい姉妹、フィオルデリージとドラベッラには、それぞれグリエルモ、フェッランドという婚約者がいる。2組のカップルは相思相愛。
ある日、青年士官2人が互いに恋人自慢をしているところに哲学者ドン・アルフォンソが登場して、女の貞操なんかあてにならないと言うので、若者たちは反論する。どちらの言い分が正しいか賭けようということになり、士官たちはいったん戦場に行ったことにし、その後で外国人に変装し、それぞれの相手を口説いてみようということになる。これに姉妹に仕える訳知りの小間使いデスピーナが加わってゲームが進行する。
まず妹ドラベッラが「外国人」の1人(実は姉の恋人)になびき、やがて姉フィオルデリージももう1人(実は妹の恋人)のプロポーズに負けてしまう。
自分たちの恋人がかくも簡単に心変わりしたことに、男たちは腹を立てるが、ドン・アルフォンソは、こうした苦難を乗り越えてこそこれまで以上に強い愛で結ばれるのだと説く。

●ここがポイント
・フィオルデリージとドラベッラの二重唱  ご覧なさい、妹よ
・フィオルデリージが男たちを退ける  岩のように
・現実的な性格のドラベッラのアリア  恋は盗人
・フェッランドのアリア  我らが恋人の優しい息吹は
・デスピーナが性格を見せる  女が15になれば
・フェッランドとフィオルデリージの二重唱  もうすぐ腕に抱かれて

●モーツァルトの時代のオペラ
モーツァルト(1756~1791)の生きた18世紀後半の時代は、オペラ史では大きな変動期でした。伝統的なオペラ・セリアは衰退期に入り、それに代わって現代(当時として)的・庶民的な題材を扱ったオペラ・ブッファ(喜劇的なオペラ)が勢いを増しました。
ドイツ語圏では、従来のイタリア・オペラ一辺倒から、次第にドイツ語の歌劇であるジンク・シュピールが書かれるようになりました。従来は王侯貴族を中心とする宮廷劇場で上演されることの多かったオペラが、次第に公開の劇場でも上演されるようになり、裕福な市民層が主要な観衆となるにつれて、オペラの作品自体も変貌を遂げたのです。その様子は映画「アマデウス」を観ていただくとおもしろいでしょう。
モーツァルトの作品には、「フィガロの結婚」や「コシ・ファン・トゥッテ」のようにイタリア語で書かれたものと、「魔笛」のようにドイツ語で書かれたものがあります。ほぼ25年に及ぶモーツァルトのオペラ創作の足跡は、彼がそうした変動期にいたことを示しています。
日本では、松平定信による寛政の改革が行われた頃です。

●ダ・ポンテとの3部作
モーツァルトは腕達者な台本作家ロレンツォ・ダ・ポンテと組んで3つの傑作を作りました。
「フィガロの結婚」1786年、「ドン・ジョバンニ」1787年、そして「コシ・ファン・トゥッテ」1790年です。
「フィガロの結婚」はボーマルシェという天才劇作家の原作をオペラ化したもの、「ドン・ジョバンニ」はスペインの言い伝えをもとに以前から色々な人の脚色があったのをないまぜにして作られたものと言われています。「コシ・ファン・トゥッテ」はダ・ポンテの書き下ろしです。いずれも複雑な筋立てに加えて、モーツァルトによる、美しいだけでなく登場人物が生き生きと動く曲作りが、この作品たちを今も上演回数の多いものにしています。

●女はみんなこうしたもの
「コシ・ファン・トゥッテ」は1790年にウィーンで初演されました。「女はみんなこうしたもの」という意味のタイトルです。賭けをして女性の気持ちをもてあそぶというのは、考えようによってはとんでもない話かもしれませんが、200年以上昔のお話のテーマとしてはなかなか斬新とも言えるのではないでしょうか。ちなみに生真面目な性格のベートーヴェンは、軽薄すぎると切って捨てました。
一方で恋人を信じていながら一方で恋を仕掛け、その結果裏切られた形になって2人の男は怒ります。報いは返ってきたとでも言いましょうか。しかし、果たしてこの話の後、2組のカップルは実際どうなったのでしょうかね。

参考図書 「オペラ鑑賞ガイド(小学館)」
       「図説世界のオペラ50(河出書房新社)」
       「オペラを知っていますか(音楽之友社)」
       「思いっきりオペラ(宝島社)」
       「オペラの快楽(宝島社)」
       「オペラの発見(立風書房)」
by 50TEMPEST | 2005-06-12 08:48 | 歌舞伎,オペラ