あるワークショップでのことです。
2人一組になり、質問し合って、互いに知り合おうというワークをしました。
その後、ファシリテーターから、「こんな質問がうれしかった、という人はいる?」という投げかけがありました。
杖をついて、足が不自由な方から手があがりました。
どんなことで悪いのか、たずねてもらったのがよかったとのお話です。
驚いたことに、この方は脳腫瘍で、そのため片足の感覚がないのだそうです。
さらには、他の部位あちこちの罹患、治療歴を経てきているとのことでした。
「聞いてみるもんだねえ」
ファシリテーターは言いました。
まさにそうです。
私には聞けなかったでしょう。
コーチングやカウンセリングのトレーニング中、ロールプレイでこみいった事情が出てきたとき、質問できない自分がいます。
ましてや、明らかに体の不自由な方に対しては、そのことに触れてはいけないという気持ちが働きます。聞いたとして、せいぜい「もう長くお悪いんですか」ぐらいでしょうね。
聞けない背景には、心の中に、安っぽい同情がありそうです。
そっと、うまく折り合っていきたいという気持ちも。
この方のような場合もあるのですね。
おそらくは、経験を積み重ね、「今」を、落ち込んだものではなく勝ちとったものと考えて、そんな場にも堂々と参加されている。
考え込まずに、子供のように、ポンと聞けばいいのでしょう。
貴重な経験でした。